60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

家族のかたち、はないやろ

CSで“Once upon a time in the Midlands”という映画をやっていたので、
おないの星、Robert Carlyleネタです。


しかし、“Once upon a time in the Midlands”の邦題が、「家族のかたち」というのは…。
他にも、“Ratcatcher”の「ボクと空と麦畑」、“All or nothing”の「人生は、時々晴れ」
“Spider”の副題「少年は蜘蛛にキスをする」、“Billy Elliot”の「リトル・ダンサー」…。
多分、日本の映画界は、イギリス映画に悪意を持ってます。


以上は、いずれもいかにもイギリス(が舞台)な、
ワーキングクラス・カルチャー(へのノスタルジー)映画です。
あとこのセンでは、Robert Carlyle主演の「フルモンティ」、
ユワン・マクレガーの「Blassed off(ブラス!)」や「リトル・ヴォイス」。


ヒュー・グラントが、イングリッシュかつミドルクラスのアイコンだとすると、
スコティッシュでワーキングクラスの代表が、Robert Carlyle。
(ユワン・マクレガーもスコティッシュですが、パブリック・スクール出だし、
ちょっとメジャーになりすぎました)
Robert Carlyleと言えば、“Trainspotting”のすぐキレる男の役が有名なので、
エディンバラ界隈のアンダークラス・イメージが強いかもしれませんが、
出世作“Riff Raff”以来、グラスゴーのワーキングクラスという出自にそった
役どころも多いです(「フルモンティ」の舞台は、シェフィールドでしたが…
Angela's Ashes”では、アイリッシュでしたが…)。


で、“Once upon a time in the Midlands”でも、
グラスゴーからノッティングに流れて来たlads役です。
ノッティングと言えば、アラン・シリトーの“Saturday night and Sunday morning”の街。
“Riff Raff”でも共演していたRicky Tomlinsonともども、いい味出してます。


“Once upon a time in the Midlands”は、過去を描いた映画ではないのですが、
やはりワーキングクラス・コミュニティへのレトロスペクティヴ映画だと思います。
造船所や製鉄工場、炭坑などはもうなくなってしまったけれども(なくなったからこそ)、
そこでの人間関係を、やや美化しつつ、愛惜する系の映画は、やはりイギリスの独壇場でしょう。


「ガキ帝国」では生々しすぎたことでも、
「パッチギ」くらい間をおくと、なんだかアメリカン・グラフィティっぽいです。
“Kes”や“Saturday night and Sunday morning”では、救いのなかった現実も
サッチャー政権下の炭坑閉山の嵐から20年も経てば、“Billy Elliot”な思い出となります。


イギリスのことは、本当のところはよくわからないので、それはそれとして楽しんでいますが、
日本での、昨今の「昭和30年代はよかった的回顧」には、少し違和感を感じています。
時間による記憶の風化も問題でしょうが、記憶の浄化についても、少し注意を向けたいものです。


ところで、三谷幸喜も1961年生まれでした。