60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

入試・震災報道・アイドル・障害学



写真は、たそがれるコアラ。王子動物園にて。
昨日は、原稿書き、電話取材対応、3年ゼミ、会議、会議。
今日は、院ゼミ、会議、研究会など。
以下は、先週同様、3年生の個人発表へのコメントを
ゼミのメーリングリストで流したもの。


>昨今の大学(入試)を扱ったの新書数冊を読んできたNくん(予備校でチューターのバイト中)
最近の大学(入試)の動向は、新書や雑誌記事などで追うとして、書籍としては
「教育社会学」とか「メリトクラシー」で検索かかけて、ヒットした本を眺めていくのが吉。
メリトクラシーは聴きなれない言葉かもしれませんが、
「メリットつまり能力のある人々による統治と支配が確立する社会」
特にその能力が大学入試の結果ではかられてきた学歴社会、といった意味あいで使われてきました。
入試の多様化の中で、そのあたり、どうなっていうくんでしょう。
あとは、溝上慎一という名前で検索かけて、ヒットした本(大学論・大学生論など)も吉。
教育心理学・溝上氏のホームページもいろいろ充実していておもしろいです。
大学生キャリア意識調査のリンクをたどっていくと、どのような学生(生活)のタイプが、
就職活動の結果につながるか…といったレポートが出てきて、けっこうエグくていいです。
「授業外学習・読書」「インターネット・ゲーム・マンガ」「友人・クラブサークル」の
すべてに積極的な学生生活が吉だとか。当たり前のことのようですが、なんかよくわかる話。
少し古いですが、塚田守『浪人生のソシオロジー:一年の予備校生活』大学教育出版、1999
なんて本もあります。


>とりあえずテレビに関して(震災報道、海外との比較、放送の日本語etc.)というTさん
震災とメディアに関しては、最近出た本で言えば
立入勝義『検証東日本大震災:そのときソーシャルメディアは何を伝えたか?』ディスカヴァー携書(新書)
荻上チキ『東日本大震災の流言・デマ 』光文社新書
など。特に前者は、海外での震災関連の情報の流れがたどれておもしろい。
野村総合研究所の「震災に伴うメディア接触動向に関する調査」も、
同社ホームページのニュースリリースにその結果概要があります。
海外と日本のバラエティ番組の比較…、という話は、ちょっと文献思いつきません。
ドラマだったら、河津孝宏『彼女たちの『Sex and the City』:海外ドラマ視聴のエスノグラフィ』とか。
「最近の日本語」に関しては、秋月高太郎で検索かける→社会言語学系の本を芋づるで。
松本修本で言えば『探偵!ナイトスクープ』という本だったかで、
画面に各種のテロップをのせていく技法が、いかにして生まれ、定着したかみたいな話もあったはず。
(ウロおぼえ)


太田省一『アイドル進化論』を読んできたAさん
アイドルに関する研究書は、ほとんど太田本以外ないと思います。
(映画)スターと(テレビ)タレントとを対比させた議論は、いくつかあるのですが…
アイドルファン研究としては、玉川博章ほか『それぞれのファン研究―I am a fan 』風塵社
という本の中に、辻泉さんのジャニーズファン研究があるんですがねぇ…
そういえば『ヤンキー進化論』という本を書いたとき
80年代くらいまで女性アイドルのファンというかオッカケは、基本ヤンキーだったのに
90年代以降オタク(ヲタク)と呼ばれる人になっていったのはなぜなんだろう???
といった話をした記憶があります。90年代に制服向上委員会というアイドルユニットのファンが
ライブ会場で暴れたり、東京パフォーマンスドールにやたらゲイのファンがついていたり、とか(追憶)。
まぁ、先行研究がない分、自分で資料集めて論を組み立てていくしかないですね。
日経エンタテインメント』のバックナンバーなどを繰っていければいいのですが、
大学図書館は最新刊を入れるだけで、保存はしていないよう(怒)


乙武洋匡五体不満足』などへの感想のTくん(自身も障害を持つ)
授業中に言ってたホーキング青山さんの本や石川准・長瀬修『障害学への招待』あたりから。
石川准氏は全盲社会学者でいろいろ著書あり。
あと図書館で「ろう文化」で検索すれば、もろもろヒットするはず。
ろうは障害ではない、ろう者は手話という言語を話す、言語的なマイノリティだ! といった宣言など。
それから石井政之で検索すれば、顔にあざなどがある人たちの生の様式…といった議論にたどり着くはず。
また横須賀俊司で検索すれば、頚髄損傷者の生の様式をあつかった諸論文…
ほんとに多様で、読み進むと最初は混乱すると思いますが、いずれも思考を進める、よい刺激になるはず。


何のゼミやってんだかよくわかんないですが、まぁいろいろおもしろい。