60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

指先関節一つの差



昔、広告代理店でコピーライティングの仕事をしていた頃
上司に「お前は後指先一つの努力をせんからダメだ、この仕事への執念が足らん」
と言われたような記憶がある。その上司を、仕事をしていく上でのリーダーとしても
人間としても、信頼も尊敬もしていなかったが、この指摘には得心がいった。
多分、そこがコピーライターとしても企業人としても、大成しなかった最大の理由だろう。
その後、研究者となり、教師となり、いくつかの校務に携わり、父親となり…だが、
つねにこの欠点は自分について回ったと思う。
だが、もうこの年になると性癖は治らないので
さまざまな領域でそこそこのところまで行くという能力で、指先一つ抜け出たい!
と思うようになってきた。と、何の話をしたいかと言いうと、今期のゼミ生選考の総括など。
(まぁこれもめったなことは書けないので、ぼんやりとした概要など)


数字的には、9月末の説明会後、10月中に97名の学生から面談のアポイントメントを受けた。
(もう一度来ます…という学生もいたので、のべ120名。結構しんどかった)
最終的に当ゼミにエントリーしたのは64名。面接を必須としていないので
最後まで顔がわからなかった出願者が6名。で、64名中25名を残す旨、先週末発表。
当学部の場合、3〜4年のゼミは必修なので、1次で決まらなかった学生は、2次選考へ。


25名を残した理由は、人それぞれまちまちだが、最後で指先一つ伸ばしてきた、ないしは
あと指先一つ伸ばすことができれば、もっと伸びる子なのに…
と思った人たちであることは確か。ゼミへの所属を断った人でも
いいラストエフォートは多々あったのだが、そのあたりは縁としかいいようがない。
1学年25名は、ゼミの人員としてはほぼ上限だろう(ちなみに、1次で17名は採るように
と言われて25名残した。おおざっぱな計算だが、17名×ゼミ開講教員数>当該学年学生数)。


今朝コンビニで井上雄彦『リアル11』を仕入れ、早速読んだが、野宮、指先伸ばしたのに…!?


97名アポで64名エントリーなので、面談には行ってみたけれど手ごたえ今一つだし
出願者多そうだし、他のゼミに出す〜、という人が33名いた。それはそれで一つの判断。
あからさま様子見は、内心むかついたけれども、まぁオフィスアワー等で
会いたいという学生には会うのが、教員の仕事ってもんだろう。
倍率2〜3倍になりそうと全員が認識してたかは?だが、ともかく覚悟の64名だったと思う。


会わなかった学生もいるので、64名すべての入試形態は把握していない。
残った25名中、一般入試組12名。例年のことだが、私は若干、
各種入試組(内訳はいわゆる内部2・継続校1・提携校2・協定校1・指定校3・AO4)
が好きなタイプの教員であるようだ。ただし、受け容れなかった各種入試組も
少なくとも14名いたことは、フォントをゴチにして主張しておきたい(やり方わからん)。


今回、全般的にみて気になったのは、AO組は除くが
他の各種入試組も面接試験を経ているにしても、それは「基本的には落とさないための面接」
でしかないという点。減点法でみられ、何か問題はないかというスタンスでの面接。
だが、2〜3倍とはいえ、ゼミ選考の面接は「どの子をピックアップするか」という視点で
行ってきた。要は、加点法。「あなたがゼミに居ることが、ゼミにとってどういった
プラスとなるかをアピールして」というこちらからの問いかけに、押し黙る人も多かった。
(「ムチャぶりですね」とさえ言われた)
え、何でそんなこときかれるの、面接って問われたことに(無難に)答えてればいいはずじゃあ…


バイトの面接だったらそうだろう。でも、1年後多くの学生は、加点法の評価に日々さらされて
何十倍、何百倍、時には何千倍の壁に挑んでいく。そろそろ頭切り替えてくれ〜
と思うことが多かった(といったことを遠まわしに言った子の多くが、
最終的にエントリーしてこなかった。それはお互いにとって幸福なことだったと思う)。
面接を必須にしてない以上、わざわざ来たのは、何か言いたいこと、聞きたいことがあるからだろう
とこちらは思っている。でも、学生の側は、皆行ってるし、行かないとダメだと先輩に言われたし…
と来ていることが多かった(今回は6名から誰も残らなかったが、例年1名くらいは
会わなかった子の中から残すことも、してきているのだが…)。
面談に行けばよい、ということでは決してない。面談での内容が問われているのだ。
よく「○○したら通りますか?」と聞かれたが、
「○○した人にも受け容れる場合と、そうでない場合がある」とつねに答えてきた。要は、内容。


あと今回の25名の特徴としては、出身校のエリア的には静岡・愛知〜福岡・熊本まで。
(偶然だが、3年生も4年生も、総数25名)
昨年の宮城・埼玉〜愛知・岐阜〜福岡に比べればややさびしいか。
でも一昨年は、愛知・福井〜愛媛・山口だったので、それよりは広い。
他には、ここ2年ほど1人はいたスポーツ推薦組が残らなかった。
一般入試組に国立高校出身3名(念のためだが、くにたち高校ではない)。
4年生に京都と奈良が各1名いるが、今回はすべて大阪。
国立大付属中高出身者は、なんかのびのび育ってる感じがする。
滋賀・和歌山・神戸などは中学までで途切れてしまうので(神戸は中高一貫化)
ちょっともったいない気がする。のびのび育ってきて、いきなり高校で私立に入って
スーパー受験指導やら、立ち居振る舞い無茶苦茶厳格やらに面食らう話を、何回かきいたように思う。


ま、ともかく2年の秋の時点で
・自分は評価する側ではなく、される側なのだ
・こちらからポイント取りに行かない限り、誰も向こうから来てくれない
くらいの心構えをもっておくと、先が楽になるように思う(世知辛い話だけれど)。
就活は、スマートにやってて結果出るようなものではないし、
サクサクっと決まったように見える人でも、どこかでものすごくもがいていたはず。
で、あとは、指先一つで残ろうとする執念(って、それができなかった人間に言われたかぁないか)。


泥臭く。「朋ちゃんへって 入れてクダサイ!!」と野宮は言った。