60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

新入生諸君!



晴天に恵まれて、入学式、そして宣誓式。
総合体育館での入学式では壇上に座っているだけだったが
学部に分かれての宣誓式(@中央講堂)では式辞というお仕事がある。
なんとかこなせたような気もするが…。まぁ、過去は振り返らない。


2016年4月1日付日本経済新聞夕刊に載せた「新入生諸君!」というコラムを貼っておきます。


 新入生の皆さん、保証人の皆様、本日は誠におめでとうございます。
 新入生諸君は、新しい環境にとまどい、緊張していることでしょう。私も昨日学部長になったところで、この祝辞がほぼ初仕事となります。緊張した状態で長々としゃべると、余計なことまで口走ってしまうので、ごく手短にお話したいと思います。
 さて皆さんは今日、この大学、学部のメンバーとなりました。もちろん、ここが第一志望ではなかった、たまたま入っただけだという人も、中にはいることでしょう。それはわかった上で言いますが、まずこの大学・学部を好きになって、ここでの生活を楽しく、意義深いものにしようという気持ちになってください。
 なにも、この学部の現状がパーフェクトだと言うつもりはありません。改善しなければならない点もあるでしょう。それは教職員の務めですし、また学生の側から提案する仕組みもあります。改めるべきは改めつつ、学部を発展させていきたいと私たちはつねに思っています。
 時折、今自分のいる場所を「ダメだ、下らない」と言い募るだけの学生を見かけます。でもそうした人も、外から見ればその集団の一員であることに変わりありません。周囲をバカにする人には、「オマエもな〜」という評価がはね返ってくるものです。
 ここを卒業していく時に、より高い評価を社会から得られるのは、この場所で過ごす日々を、いかに充実させようかと考え、行動し続けた人です。「時期がきたら、ところを得たら、本気を出すけど」と言うだけの人には、いつまでもその時期もところもめぐってはきません。
 まず、今ある環境の中で、前向きに物事に取り組むこと。それが皆さんに申し上げたい点の一つ目です。
 二つ目は、今までの話と矛盾するようですが、大学は次のステップへの通過点にすぎないということです。
 この大学・学部が、すべての人にフィットし、ここで豊かな人間関係を築いていってほしいのですが、皆が皆、うまくいくとは限りません。しかし、大学に一生いるわけではありません。ここでやや居心地悪くても、次の場所でうまくいけばそれでいいのです。では、うまく次のステージへと進むためにどうすればよいかと言えば、やはりここでの生活を充実させることに尽きます。
 話が循環しているようですが、今いる場所で、できるだけ有意義に日々を送り、多くのことを吸収しようとした人に、新たな道は開けます。
 皆さんは、同じ大学の同じ学部に入り、同じ行き先の船に乗り込んだつもりでいるかもしれません。しかし、進路はいろいろに分かれます。自分の希望したところへとより速やかに近づける人もいれば、なかなかうまくいかない人も出てきます。
 入学早々こんな話をされるのは嫌でしょうが、大学生活は皆さん次第で濃くも薄くもなります。大学を出る時に問われるのは、それまで生きてきた時間の密度です。その人を組織に受けいれたならば、仕事を頼んだならば、がんばってくれそうか、受けいれた側・頼んだ側にどんなプラスをもたらしてくれるのか。社会はそう皆さんに問いかけてきます。
 アッという間だった、何もしないうちに…と、4年後呆然としないように、今日から歩み始めてください。焦る必要はないですが、先を見すえて急ぎましょう、といった話を私は明日する予定である。