60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

チャペルアワーのすすめ2



いや、電信柱がなくなるのは、やっぱりいいなぁ。
この春学期、「広告文化論」のご担当をお願いしている鈴木雄介さんからの拝借。
前日に引き続き。


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 私は関西学院大学で働きだして21年目に入りました。しかし、就職までほとんど縁がなかったため、関西学院というところがどういったものなのか、何となくわかりはじめた気がしたのは、ついここ数年のことです。
 かつて私がそうでしたが、皆さんの多くも、関西学院とは関西学院大学のことだと思っているかも知れません。この中には中学部や高等部の出身者や、千里国際の出身者などもいると思いますが、その人たちは、関西学院大学に入る前から、関学に所属していました。学校法人関西学院には、大学だけではなく、高校・中学・小学校・幼稚園、さらにはインターナショナルスクールなどが属しています。それらをひっくるめて、関西学院なのです。
 体育館の入学式のとき、まず最初に式辞を述べた学長は、大学の長です。その次に式辞を述べた院長は、幼稚園から大学までの、関西学院全体の長です。一方、最後に紹介のあった理事長は、関西学院全体の経営をみる人です。学長、院長、理事長。よくわからないかもしれませんが、とりあえず、これが学校法人関西学院の三役だと思ってください。
 この三者の関係ですが、ある本を読んでいて、これ近いんじゃないかと思った経験が私にはあります。
 キリスト教にはまったく無関係ですし、大学論、学校経営論などでは全然なく、イギリスのビールメーカーの創業者、ジェームズ・ワットという人が書いた『ビジネス・フォー・パンクス:ルールを破り熱狂を生むマーケティング』(日経BP社、2016年)という本です。
 日本でも地ビールなどが盛んにつくられるようになってきましたが、イギリスでもある時から、小規模な蒸留所でのビールの製造が許されるようになりました。ジェームズ・ワットとその仲間は、大手のビール会社の、大量生産の気の抜けたビールではなく、自分たちが本当においしいと思えるビールを作ろうと思い立ちます。「ビジネス・フォー・パンクス」というくらいですから、なかなかヤンチャなお兄ちゃんたちで、いろいろゲリラ的なプロモーションを仕掛け、物議をかもしたりもしました。
 しかし、このビール会社が軌道に乗り、成長を遂げていることからもわかるように、ただ好き勝手やっているわけではありません。ジェームズ・ワットは、このどの要素が欠けても、事業は成り立たず、組織の発展は望めないものとして、「企業文化」「品質」「粗利」の三つをあげ、それらを三位一体のものだとしています。
 大手ビール会社に一泡吹かせてやりたいという、パンキッシュな企業文化。そしてもちろん、ビールの味、品質は欠かせません。さらに、企業の文化や商品の品質を保つためには、利益を安定的に出さなければならないというのです。
 これを関学に置き換えて考えると、企業文化にあたる「関学文化」とはキリスト教を土台としたものでしょうが、これは院長が司ります。院長は、洗礼を受けた者に限ると定められています。「品質」は、大学の学長が担うべきものです。教育・研究の質、さらには卒業生のクオリティ・コントロールが学長の責務となります。もちろん高等部や中学部の校長、千里国際の校長なども卒業生の質に責任を負うわけですが、社会に出ていく最終段階に当たる大学・大学院の長である学長が、最終責任を担うと考えてよいでしょう。そして、粗利を担当するのが理事長です。学校法人である以上、儲ける必要はないのですが、安定的に設備施設に投資するなど、学院全体を持続的に発展させる経営手腕が問われます。
 この三人というか、三要素がそろって関学です。
 皆さんには卒業する時までに自身の「品質」を高めるとともに、他大学の学生にはない「関学文化」、関学らしさを体現してもらいたいと思います。そのためには、まずはチャペルにできるだけ出て、関学の文化にふれてください。文化は目に見えないものですが、いったん身につければ、あなたの個性となり、あなたを自然と際立たせてくれるものになります。そして、一生、あなたを支え、助けてくれるものになります。
 残念ながら、私は関学の出身者ではないので、関学文化は身についていません。この年で身につくとも思いませんが、ここにいる以上、それはリスペクトすべき対象だと考え、まず知ることから始めようと思います。昨年1年間、できるだけチャペルに出ましたし、この1年もそうします。皆さんにも、それをお願いしたいと思います。


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今日はチャペル、院ゼミ。