インチョンではない。
北中正和『アローン・トゥゲザー:ロックの扉を通って』而立書房、1976
213p「細野さんの自宅は、埼玉県狭山市鵜木のアメリカ村にある。もよりの駅まで新宿から西武線の準急にのって五十分程度の距離の所だ」
(風都市の上村・石浦と同乗)
214p「上村さんはしきりにカー・ラジオのスイッチを押したり消したりしている。FEN放送を聞くためだが、音楽番組の時間ではないらしく、英語のお喋りが続いているばかりだ。東京周辺で音楽関係者の車に乗せてもらうと、まずたいていの人がこの米軍放送の音楽番組をかける。東京の中の車の中のアメリカの放送。そして今日めざす目的地が、元米軍ハウスのアメリカ村というわけである。/アメリカ村の細野さんお家のあるあたりは、小ざっぱりとした住宅街である。アスファルトの道が一本、低い山腹の脇を走っていて、その道と山腹との間に、同じ造りの白塗りの木造家屋が四列に並んでいる。どの家も白い柵がついていたり、古い芝生が植わっていたりする。細野さんの家は、山腹側にあり、十五メートルばかり離れたところまで、緑の崖が迫ってきている」
215-6p「説明してもらったところでは、細野さんの借りている家は、十二畳相当の居間と、八畳相当の部屋がふたつ、それに台所とバス、トイレがついたもの。それで家賃が二万数千円だというから、都内に住んでいる者の感覚からすれば、とても広くて安くていいなあという感じなのだが、その広くていいなあも、これだけの人間が出入りするとなると、それほどゆったりしたスペースとはいえなくなってくる。今回の録音では、ふだん寝室に使っているところをスタジオ(演奏室)に、ふだんの書斎兼音楽室を寝室に使うようにして、宿泊しきれないメンバーは、アメリカに村に住んでる友だちのミュージシャンのところに泊るなどする予定らしい。/レコーディングに参加する主なミュージシャンは次の四人である。/エレキ・ギターが鈴木茂、ピアノ類が松任谷正隆、ドラムス、パーカッションほかが林立夫、そしてボーカル、ベースが細野晴臣。この四人は"キャラメル・ママ"(仮称)という名で、近い将来グループ活動もする予定らしい」