60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

嫌がらせのような式辞



今日は学部の入学式。体育館では壇上で座っているだけですが
その後の学部に分かれての宣誓式では、式辞のおつとめがありました。


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 新入生の皆さん、おめでとうございます。現在、学部長を務めている難波です。
 お祝いのコトバということなのですが、あまり時間をとってもなんですので、何かいいフレーズでも一言紹介して、それにからめてサラッと挨拶をし、お祝いのコトバとしたいと思い、いろいろ悩みました。
 こうした場で、何かよいコトバを紹介して話をまとめるのは、クリスチャンの先生方はたいへんお上手です。その時々に、絶妙の聖句、聖書の言葉ですね、それを引いてありがたいお話をされます。カッコいいなぁとも思い、まねしたいとも思うのですが、あいにく私はクリスチャンではなく、そういうわけにもいきません。
 しかし、学部長になってこの1年間、けっこう聖書に親しむ機会がありました。また改めてオリエンテーションがあると思いますが、関西学院大学にはチャペル・アワーという時間が設けられており、社会学部では火・水・木の1時間目と2時間目の間の時間がそれにあたります。そこに昨年春より学部長として極力出席するようにしてきました。
 来週から始まるチャペル・アワーには、最初の一週間の間、宗教主事の先生と私ないしは副学部長の先生がチャペルのオリエンテーションを一年生に向かってします。またその時に、チャペルに出ること、せっかくキリスト教主義の学校に入ったのだから、キリスト教に親しむことを皆さんにお勧めしたいと思います。人に勧める以上、自分も出なければというわけで、昨年度私は可能な限り出席しました。面白い話も聞けましたし、その際に聖書を繰ったりはし始めているのですが、付け焼刃で聖書の言葉を引いて何か話すというのは、火傷しそうなのでやめておきます。
 なので、何かいいフレーズはないかと、ここ半年ほどの間に買ったCDの歌詞カードをひっくり返してみました。私は古い世代の人間なので、ダウンロードするより、CD買います。
 で、まず、いいフレーズがということではないのですが、この話はしておいたほうがいいなぁと思ったのは、知っている人も多いと思いますが、昨年秋に出たヤバイTシャツ屋さんというバンドの「We Love Tank-top」というアルバムです。まず紹介したいのが、「ウェイウェイ大学生」という曲です。歌詞を頭から読んでいきますと


産近甲龍あたりの学生は制服着てユニバ行きがち 
関関同立あたりの学生はなんやかんやでいい企業就職しがち


と始まります。
 これはまず強調しておきたいのですが、関学の学生でも、皆が皆、何やかんやでいい企業就職するわけではありません。ウェイウェイ言ってりゃ何とかなるというものではありません。何も就職することがすべてだとは思いませんし、大学院への進学や留学など、いろいろあっていいとは思います。しかし、多くの人が就職活動に臨むわけで、最終的に納得のいく就職活動ができた人にしても、何度も何度も叩きのめされては這い上がり…を繰り返した結果です。関学生でも、高校の制服を着てユニバーサルスタジオ行ったり、4年間ウェイウェイ言っいてるだけの人もいます。新入生には一緒にウェイウェイしようと言って勧誘する先輩たちが寄ってきますが、あまり相手にしないでほしいと思います。息抜きにウェイウェイ言ってる場合はいいのですが、ウェイウェイ言うことが目的になってる団体もあるので。
 また、こんなフレーズもあります。


単位落として留年してまえ ウェイウェイ大学生


これはやめてください。入学式早々こんなこと言うのもどうかと思うのですが、皆さんには4年後、行き先を見つけて、すみやかに大学生ではなくなっていてほしいと思っています。それから、こんな歌詞もあります。


TwitterとかFacebookとか炎上してまえ ウェイウェイ大学生


これも絶対やめてください。ここにいる多くの人は未成年なので、飲酒は厳に慎んでいただきたいし、それを自慢げにSNSにあげるのはもってのほかです。ネット上に実名を変なかたちで残したら、その後ずっとついて回ると思って間違いないです。ウェイウェイ言っているだけの4年間を送らないでほしい、まずそれだけは伝えたいと思います。
 あと、この「We Love Tank-top」というアルバムからもう一曲、あぁこれ関学社会学部生のことを歌っているようだなぁと思った歌詞があったので、その曲も紹介したいと思います。「流行のバンドのボーカルの男みんな声高い」という曲があって、3人が出会い、ヤバイTシャツ屋さんを結成するまでのいきさつを歌っているのですが、その中に


やる気に反するプライドがいつでも僕らの邪魔をするけど


とあります。やる気ないけどプライドは高い、何かを一生懸命やるのは嫌だけど評価はされたい、みたいな学生が、関学生、社会学部生に限ったことではないし、大学生全般に言えることかも知れない、また自分が大学生だった頃そんなもんだったかも知れませんが、社会学部の教員をやっていると、やはり目につくように思います。
 ともかく、やる気前面に出して、必死にガツガツするの、なんかかっこ悪いという人が多いように思いますが、何もしないと何も生れませんし、待っていても何かがむこうからやってくるとは思えません。ヤバイTシャツ屋さんにしても、あれだけの曲が書けるし、ライブできるし、かなり自分たちでプロモーションをコントロールしているようですし、陰で非常に努力し、頭を使っているんだと思います。そういう人たちが、いくら自分たちのことをウェイウェイ大学生だと言っていても、まに受けないでほしいと思います。
 入学早々、嫌なことばっかり言ってるし、いいフレーズ紹介してサラッと終わるといっときながら、なかなかそれ出てこないし…と思っている人も多いと思うので、そろそろ話をまとめたいと思います。
 で、今日ご紹介したいし、覚えておいてほしいフレーズですが、いろいろ迷って、結局この3月の卒業式の日のあいさつに使った歌詞を、またここでも使うことにします。 
 4年後の卒業式がどうなるか不確定なところもありますが、例年、今日の入学式と同じようにまず体育館で全体の会があって、その後、ゼミごとに小さな教室に分かれて、ゼミの先生から卒業証書を受け取ります。皆さんは、2年の後半から、どこかのゼミ――壇上に並んでらっしゃる先生方はおおむねゼミを担当されますが――に入って2年半を過ごし、卒業論文を書き上げ、卒業していくことになります。なので、卒業式の日に学部として何かをすることはあまりないのですが、ゼミごとの卒業証書の授与の後、社会学部のチャペルにて、同窓会賞と優秀論文安田賞の授与式をやっています。
 同窓会賞は、関学の同窓会から社会学部の卒業生2名を表彰するものですが、4年間の成績の上位2名を表彰するのが通例です。この学年だと680名程度いるはずですが、その1位、2位です。また優秀論文賞の方は、その年に提出された卒論の中から、優秀作数点を選び、それを書いた人を表彰するものです。その人たちにも、学部長から一言、という機会があったのですが、そこでは、ぼくのりりっくのぼうよみの「Be Noble」という曲の歌詞を紹介しました。
 これも、映画のテーマ曲になったりして、聞いたことのある人も多いと思いますが、その「Be Noble」という曲には


誰よりも自分が誇れる自分になりたいよ


というリリックがあります。


誰よりも自分が誇れる自分になりたいよ


 パンチラインということになるんでしょうか、聞かせどころというか、非常に耳に残るフレーズです。世の中には、自分のことではなく、自分の周囲の人のことなどを誇らしげに語る人はいますが、何より肝心なのは自分が誇れる存在になることだというのです。
 同窓会賞の人たちは4年間の間、優秀論文賞の方も2年秋から準備をし、ずっとがんばってきたことが結果につながったのですから、当然そのことを誇っていい人たちです。「同窓会賞、優秀論文賞をとったことは、誇りに思ってください。皆さんは、誇れる自分になるために努力し、実際に力をつけてきたのです。そして、その誇りを胸に、明日からはまた新たな課題に取り組んでください。この賞がゴールではなく、スタートラインだと考えてほしいと思います。でも、皆さんはただスタートラインに立ったのではなく、誇れる自分としてそこに立ったのです」というようなことを申し上げました。
 別に勉学、研究だけには限りませんが、この4年間、これだけのことをやったと誇りをもってここを巣立っていけるよう、今日からの一日一日を大事にしてほしいと思います。結局4年間ウェイウェイ言ってただけで何も残らなかった、まわりはなんやかんやでうまくいってるのに…ということにならないよう、心して大学生活を送ってください。4年後誇れる自分になるかならないかは、みなさん次第です。
 あいさつの冒頭で「おめでとうございます」といいましたが、皆さんに本当におめでとうと言えるのは、4年後皆さんがしっかりと次の場所へと旅立っていくときだと思っています。今はカッコ付のおめでとうです。
 本日は皆さん、4年後の本当の「おめでとうございます」をめざしてのご入学、とりあえず、おめでとうございます。手短にと言いながら長くなりましたが、以上をもちまして、式辞に代えさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。