60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

【61年生6】スケートボーダーとスターボー

いきなりネタ切れでもないのですが、映画“Lords of Dogtown”を見た勢いで
海外ネタも少しやってみます。(無理やり話をつなげると、
以前紹介した『東京スタディーズ』には、田中研之輔「新宿ストリート・スケートボーディング」
といった論文も採録されてたりします)


この映画は、“Dogtown & Z-boys”というドキュメンタリー映画を下敷きにしていて
いわばドキュメンタリーのドラマタイズというややこしい作品ですが、
まぁ素直に感動できる青春映画の佳作です。(あまり客の入りはよくなかったけど)


話の内容は、70年代のLAダウンタウンの悪ガキたちが、Z-boysというチームを組み
スケートボードの才能一つで脚光を浴び、のしあがっていくのだが、
成功する者もいれば、ビジネスに挫折する者も、ドラッグに溺れる者もおり…
みたいな点は、“Dogtown & Z-boys”も“Lords of Dogtown”も同様です。


ただ、“Dogtown & Z-boys”の方は、Z-boysのメンバーの一人であり
成功したスケートボーダーであり、かつスケートボードチームの運営や
ビデオ製作でも成功したステイシー・ペラルタが監督しており
(自らインタヴューイーとしても登場)、
非常にキメの細かなスケートボード史の解説と、かつての仲間と故郷への愛惜の念は
当事者ならではの深みと凄みがありました。


ビバリーヒルズ等の豪邸の干上がったプールに忍び込んだ悪ガキたちの
スケートボーディングの中から、
「バート(vertical)」と呼ばれる立体的なプレイ・スタイルが生まれ、
それが、今日のスノーボードハーフパイプなどへと発展していく…
といった話はちょっと衝撃的で、スコットランド留学中に、
キャンパス内の映画館で“Dogtown & Z-boys”を見た時には、いたく感動し
しばらく席を立てずにいた覚えがあります。


でもまあ“Dogtown & Z-boys”も、ドキュメンタリーといいつつ
そこには何らかの「過去の再編集」はあったのでしょう。
そして、それを青春ドラマに仕立てた際には、当然
何人かの主要キャストが不在だったり、架空の人物が挿入されたりもしてきます。
(かなり実話に忠実なつくりではあるものの)
たとえば、Z-boysの母体となったサーフショップZepherの中心にいた
中国系のサーフボード・シェーバーが、“Lords of Dogtown”では消えていました。
日系のスケートボーダーたちも陰が薄かったです。
そのかわり、ヒスパニックのエスニシティは強調されてました。
アメリカでの集客を考えるとそういうことになるんでしょうか…???


“Lords of Dogtown”を見てから、再度“Dogtown & Z-boys”をDVDで見返してみると
“Lords of Dogtown”では描かれていたのに、
“Dogtown & Z-boys”では語られていなかったことが、逆に気になってきます。
“Lords of Dogtown”の中では、ステイシー・ペラルタは
最初Z-boysのメンバーから外され、ちょっとミソッカス扱いをされていました。
当然それは、話を面白くするために、
後から創作され、挿入されたエピソードなのかも知れません。
しかし、それがもし事実だとすると、“Dogtown & Z-boys”を撮った時に、
ペラルタはその思い出したくない過去をあえて取り上げなかった…
といったこともあり得るのでは、と想像をたくましくしてしまいます。


あとスケートボーダーを追ったドキュメンタリー映画として“Stoked”というのも衝撃的でした。
バート・スタイルのカリスマであったマーク・“ゲイター”・ロゴウスキが、
90年代に入り、ストリートスタイルへとスケートボーディングの主流が変化する中で
かつての栄光から転落していく…、みたいな話です。


スケートボード=ストリートとなっていく中で、
スケートボードがサーフィンから派生したことも忘れられていくんでしょう。
サーファー、自然、エコロジー、ヒッピー・ムーヴメント…
スケートボーダー、コンクリート、Xゲーム、スラッシュメタル


このブログの趣旨に引き寄せるならば、70年代後半に日本にスケートボードが紹介された時は
アメリカ西海岸、サーフィン、ローラースケート…
みたいな文脈込みであったと思います。『FINE』などもまだなかった頃で
『anan』が西海岸特集をやってたりしたのがご愛嬌。
当時『anan』は、若者ファッションの総合誌でした、というか、
今みたいにファッション自体も雑誌も細分化されてなかったよなぁ、って話です。


で、スターボーは、80年代に入ってテクノブームの仇花というか、なんというか。
宇宙から来たという設定のアイドルグループでした。こりん星ではありません。