8月21日、NHK「映像の世紀バタフライエフェクト GHQの6年8か月 マッカーサーの野望と挫折」が放送されました。
マッカーサーの野望。いろいろあったのでしょうが、大統領となることを強く夢見ていたことはたしかです。1948年には、日本に居ながら大統領選挙に出馬する道を探っていました。しかし、候補指名投票の結果、共和党ではトマス・E・デューイが圧勝し、マッカーサーは泡沫候補の一人として消えていきました。
さて、「映像の世紀」をみていて驚いたのは、そのマッカーサーにも支持者たちによって「MacArthur for President Club」が組織され、キャンペーンソングもあったことです。番組字幕によると、その歌詞は「大統領になるべくしてなる男、東京での輝かしい業績が何よりの証拠 マッカーサー、マッカーサー、マッカーサーを大統領に マッカーサー、マッカーサー、マッカーサー、東洋の地から出馬中」だとか。
1948年の大統領選挙は、現職のハリー・S・トルーマンが勝利しました。そのトルーマンにもキャンペーンソングがあったのですが、それは1921年に発表された“I’m just wild about Harry(ハリーに首ったけ)”という曲の替え歌でした。
本来はラブソングだったものが、https://www.youtube.com/watch?v=_qerX8WnLEUにあるように
「私はハリーに首ったけ、そしてハリーは私に首ったけ
それは運命が決めたこと、われわれはそれに従おう
ハリーは歴史をつくる FDR(ルーズベルト大統領)はNew Dealを行った
そしてハリーはそれを続けていく この国はハリーに首ったけ そしてハリーも
この国とあなたたちなしには、何もなしえない」
いい加減な聞き取りのもと、あやしげな和訳を付けましたが、まぁこんな感じです。ちなみにトルーマンは、ルーズベルトの急死を受けて、1945年に副大統領から大統領に昇格していました。
で、その次の1952年の大統領選挙には、共和党のドワイト・D・アイゼンハワーが勝利します。その際には立派なキャンペーンソングとCMがつくられていました。
アイゼンハワーの愛称アイクにひっかけて、I like Ike.と連呼しています。ちなみに象が共和党の、ロバが民主党のマスコットなので、こうした表現になっていました。ついでといっては何ですが、ケネディのものも。
このようにメッセージを歌い込み、連呼する曲をjingle(ジングル)といったりします。ラジオCMが先行したことで、発達した手法なのでしょう。そのあたりの事情は日本も同じで、1950年代から60年代にかけて三木鶏郎ら作曲のコマーシャルソングが世の中を席巻します(泉麻人『冗談音楽の怪人・三木鶏郎:ラジオとCMソングの戦後史』新潮選書、2019)。
その後、連呼型のCMは古臭いものとみなされるようになり、いわゆる「イメージソング」――カッコいい映像に、歌詞に商品名・企業名などなく、それ単独でも成立するカッコいい音楽を付したCM――の時代もやってきますが、90年代に入る頃に揺れ戻しもあったりします(さらに、そのリバイバルが最近ありました)。
湖池屋スコーン CM 1988年verと2022年verを比較 - YouTube
1980年代からその傾向は始まっていたのですが、90年代にはテレビは集中してリアタイ視聴するものではなく、ながら視聴の対象となっていましたから、まずキャッチィな音でひきつけ、その歌詞で言いたいことを言ってしまう、というCM作法が再評価されたわけです。
一方音楽の方は、YouTubeなど動画共有サイトの普及により、まずMVとして聴かれるようになってきます。前回Playstationの“Play has no limits feat. KENSHI YONEZU”についてふれましたが、最近では以下のMVとCMが圧倒的にカッコよかったです。
NewJeans (뉴진스) 'ETA' Official MV - YouTube
iPhone 14 Proで撮影 | NewJeans “ETA”| Apple - YouTube
それは音楽なのか、広告なのかという二者択一ではなく、音楽としても、広告としてもデキがよいというのが、誰も傷つかない、よい着地点なのでしょう(が、それがなかなか難しい)。