60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

「広告」に明日はあるのか、ないのか、どうなのか。(9)今さらながら、MVは楽曲だけをプロモーションするわけではない。

 以前、「(6)それは音楽なのか、広告なのか。」の回でも、NewJeans×iPhoneを例にちょっとだけふれましたが、MVがその楽曲のプロモーションだけではなく、タイアップないしコラボによって、ある商品・ブランド・企業の広告となるような手法は、YouTubeの普及後、ここ10年来のトレンドのようです。
https://sidnanba.hatenablog.com/archive/2023/08/25

 CMのディレクターやプランナーが、MVやWebMovie広告も手掛けることが多く、両者の融合は生じやすいという経緯もあります。というか、15秒・30秒CMを作ってその長尺版もつくるというよりは、まずWebMovieがあって、そのダイジェストとして、もしくはWebMovie の視聴を促すtrailer(予告編)として15秒・30秒CMをつくるというパターンの方が、最近では主流のように思えます。ショートフィルムの作家たちが、CM業界でも存在感を増しており、両者はもう往来自由な感じです。

 そうしたディレクターの一人として、ここでは松本壮史監督をとりあげます(他の方もいずれ)。

 松本監督のことが最初に気になったのは、「北欧、暮らしの道具店」(クラシコム)のシリーズWebMovieでした。クラシコムのあつかう生活雑貨等を前面に押し出して見せるのではなく、「青葉家のテーブル」という連続ドラマの中に織り込んでいくような作品です。以前述べたプロダクト・プレイスメントとはまたちょっと違い、その商品総体でかもしだす世界観をドラマを通して提示する、という感じです。また、MVではなのですが、サニーデイ・サービス甲州街道の十二月」の使われ方が絶妙で、長めのMVを見ている感覚もあります(クラムボン「ハレルトマヂカ」のMVのみたいな)。そこから入って、松本監督の映画やドラマ、CM、MVなどなど芋づる式に見ました。私はふだん、Directorの名前で映像を掘ることはあまりしないのですが(あとは松本佳奈監督くらい)。まぁ、どれもよかったです。

 世界観と言えば、最近読んだ本にこんな一節がありました。

 

「現時点においてもマーケティングはとても重要です。しかし、そのターゲティングはとても重要です。しかし、そのターゲティングは「属性別」ではなく「共感別」になるのではないでしょうか。「個人それぞれが共感できるブランドを支持する」「自分の世界観や価値観、生き方にフィットするブランドを支持する」ということです。そしてそこには、多様性のあるコミュニティが生まれる。例としてはクラシコム、ミルボンが挙げられます。/2022年に上場したクラシコムは、北欧の魅力に共感する人たちのコミュニティを作り上げ、支持を集めています。北欧の食器や洋服を売るだけにとどまらずドラマやポッドキャスト、映画を制作するなど、一貫した世界観(ライフカルチャー)を発信するプラットフォームとして機能しています。そこには確かなストーリー性があり、その物語に共感する多様な人たちのコミュニティが確立されています」(博報堂生活総合研究所『消齢化社会:年齢による違いが消えていく! 生き方、社会、ビジネスの未来予測』インターナショナル新書、2023、163-4p,日本経済新聞編集委員中村奈都子氏へのインタビューから)

 

 ブランドないし企業のコンセプトを伝えるための「青葉家のテーブル」ということなのですが、「青葉家のテーブル」にはLIFULLや森永製菓とのコラボもありました(特別編の製作など)。LIFULLや森永製菓にとっては、のれるコンテンツがあれば、他社のコンセプト・ムーヴィーであっても広告媒体として有効に活用する、というわけです。

 それから「北欧、暮らしの道具店」は、ガチでオリジナル・ミュージックビデオをつくっています(https://www.youtube.com/watch?v=GvmjudF303g)。これも松本壮史監督。また、ショートフィルム的な「スーツケース・ジャーニー」は、これは「北欧、暮らしの道具店」側からの仕掛けかもしれませんが、山の上ホテルのよきPRないしプロモーションとなっています。

 そして、同じく「北欧、暮らしの道具店」の「ひとりごとエプロン」シリーズ。UCCとのコラボが、YouTube Works Award2022のファイナリストになったりもしています(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000024748.html)。でもこれは、私などはクレイジーケンバンドのMVとして楽しみました。CKBと北欧。合わないと思いきや、これほどの相乗効果だとは⁉(下に貼ってあるのは、UCCとのコラボじゃないバージョン)。

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 他にも味の素(ほんだし)とのコラボもあり、料理つながりでなるほどと思うのですが、やはりCKBとのギャップがいちばん萌えます。

 クラシコムに話を集中させ過ぎたので、最後に別の例を。私が、MVと企業のコラボの最適解と思わず唸ってしまったのは、Vaundy×Morisawa Fontsでした。

 

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 最後の最後に一つだけ、個人的趣味の押し売りを(フィロソフィーのダンス×日清カップヌードル)。ano×マクドナルドもいいけれども、こちらももっと評価されて(再生されて)いいはず……

 

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