60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

(講義関連)アメリカ(22)ネイティブ・アメリカンとGoro’s

(ポピュラー・カルチャー論講義補遺)「アメリカ」を考える(22)ネイティブ・アメリカンとGoro’s

 

 前回取り上げた小田実アメリカ』(角川文庫、1976年、元は1962年刊)から、主人公がメキシコ旅行した際のタクシードライバーとの会話を、再度引用します。

 

215p「「だんな、合衆国のことを言うのは《アメリカ》という言葉を使うのはやめていただけませんかね」運転手はゆっくりと言った。「《アメリカ》というのは、メキシコもグァテマラもペルーもブラジルもアルゼンチンもふくめたことばですよ。あんたがいまやって来たあっちのほうでは……」彼は顎をしゃくってみせた。「ヒューストンのあるあっちのほうでは、《アメリカ》とは合衆国のことだけかも知れんが、それは奴らの身勝手というものでさ。……」」

 

 アメリカ(USA)の身勝手をもっとも強く感じてきたのは、アメリカ大陸の先住民族たちでしょう。

 続いては、2023年10月号『MEN’S CLUB』の特集「「ゴローズ」受け継がれしものVol.1」からの引用です。

 

「1939年、東京・十条で生まれた高橋吾郎(以下ゴローさん)。子どもの頃からウエスタンスタイル、特にネイティブ・アメリカンの文化に強い憧れを抱いていました。中学校のとき、湘南・葉山での臨海学校に参加したゴローさんは、レザークラフトでものづくりをしていたアメリカ軍の駐屯兵と運命的な出会いを果たす。彼からカービング(彫刻)などの技術を学び、その楽しさを知ったゴローさんは、臨海学校が終わってからも彼のもとに通い詰め、2人の交流は駐屯兵がアメリカに帰国するまで続きます。帰国の直前、ゴローさんは彼から工具を譲り受け、その後も独学で腕を磨いていきます」

 

 そして高橋吾郎は1972年に原宿に店を構え、レザー製品やアクセサリーを製作・販売していきます。

 

「幾度となく渡米したゴローさんは、サウスダコタ州を拠点とする米先住民族ラコタ族のリトルスカイファミリーと出会い、多くを学び、交流を深めていきました。そして1976年、ネーミングセレモニーの儀式を受ける。長時間にわたる儀式のなかでゴローさんはイーグルに出会い、“東から来た鷲”を意味する「イエローイーグル」というインディアンネームを拝受。1979年にはラコタ族の神聖な儀式「サンダンス」を受け、日本人で初めてネイティブ・アメリカンの仲間入りを果たしました」

 

 というわけで、Goro’sのシルバー・アクセサリーなどには、鷲や羽などのモチーフが多用されていくことになります。

 また、2023年11月号『MEN’S CLUB』の特集「「ゴローズ」受け継がれしものVol.2」で、中村ヒロキ(ヒビズム、クリエイティブディレクター)は次のように語っています。

 

「僕はアメカジブームの世代なので、15,16歳だった当時の表参道や渋谷あたりには、ゴローさんのアイテムを持っている人たちがいて。それを見ながら『かっこいいな』『欲しいな』っていう、そんな憧れの存在でしたね。原宿のショップの前を通るとたまに、出勤してきたゴローさんをお見かけしました。サビ色のバイク、確かハーレーだった思うんですが、愛犬を乗せて走る姿に『この人、すごくかっこいいな』と思って見ていました」

 

 このインタビューは「表参道に店舗を構えるインディペンデントなブランドは、今やゴローズ、そしてビズビムだけかもしれない。共に在りつづけることを、切に願う」と締められています。アメカジブームは1980年代頃のことでしょうが、原宿表参道(ないし裏原宿)がファッションストリートとして注目を集めていった1970~90年代には、多くの若者が自らのブランドをさまざまに立ち上げていました。しかしその後は、ファストファッションや高級ブランドのショップが立ち並ぶエリアとなっていきました。

 そして、手作りゆえにそれなりの値段がしたGoro’sのアイテムは、やがてその人気と希少性から高級ブランドと目されていくようになります。

 

「「goro's」扱う高級アクセサリー買取販売店社長の男 コカイン使用疑いで逮捕 自宅は“3億円の豪邸”」2024年2月29日配信(https://news.yahoo.co.jp/articles/bc4945ffdccc6c7dfd251b7f79f91006c4bcd04c)「高級アクセサリー「goro's」の買取や販売を行う会社の社長が、コカインを使用した疑いで逮捕されていたことがわかった。社長は豪華な自宅をメディアに公開するなどして知られていた。高級アクセサリーの買取販売店「DELTA one」を東京・渋谷区などで展開する会社の社長 堀内章容疑者は2月13日頃、コカインを使用した疑いが持たれている。捜査関係者によると、情報提供を受け、警視庁が堀内容疑者の尿を鑑定したところ、コカインの陽性反応が出たという。調べに対し「反省している」と話している。堀内容疑者が運営する会社は高級アクセサリー「goro's」の買取や販売を手がけていて、自宅がメディアで「3億円の豪邸」と紹介されていた」

 

 買い取り市場が成立し、その買い取り店の社長が3億の豪邸に住んでいるとは。サウスダコタラコタ族からずいぶんと遠くまで来てしまったものです。