60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

ゼミレポート



3年ゼミ生のレポートへの、コメントみたいなこと。


【全体】年内で研究演習1・社会学実習1終わったので、採点も済ませました。誰にも「不可」はつけてないので、安心してください。1月は、定期テスト等々がんばって、卒業にリーチ!の状態にしてください。
レポートの講評ですが、まぁ、それぞれ何かしらの、現時点でのテーマを掲げており、よかったかなぁと思います。最終的な卒論テーマは、別なものに変わってもいいですが(就活期にいろいろ考えが変わるので)、とりあえずこの暫定テーマを頭の片隅に置いておいてください。そうしておくと、テーマに関連する書籍・論文・記事などが、自然と目につき、けっこう引っかかってきます。それを溜めていけば、徐々に卒論のための素材は集まってくると思います。
評価の差は、基本的にレポートのデキでついてます。おおまかにいって、
・全体の構成がしっかりしている(これくらいの長さのものでも、章立てや目次などはあったほうがいいです)
・論旨の流れが明確であり、結論にまで話をもっていっている
・文献・資料にあたっている
・誤字・脱字が少ない、文章表現的に問題がない(読点「、」の使い方がいまひとつ、という人が多いです)
あたりを見ていますが、
個人的な好みでいえば、そのテーマが、書いている当人にとって、より切実であるものの方がおもしろく読めました。問題意識がはっきりしている、というやつです。卒論を書く作業は長丁場なので、「しばらくの間、そのことについてばかり考えていても苦にならない」テーマを選んでおくほうが楽です。では以下、個々に感想や文献紹介など。


A1「現代におけるSNSの利用法と課題」
I1「SNSの満足度と購買の関係性」

A1君が歴史的な流れを追い、I1さんはマーケティング論よりといった違いはありますが、SNSものなので、まとめて。日々自らが接しているものをテーマとした方が、問題を立てやすいし、書きやすいと思うのでSNSはありだと思います。動きが早く、産業的な規模もでかい領域なので、ネット上に各種調査データや関連記事がよくあがっており、それを使うのもOKです(出所や調査方法に留意しながら)。でも、アップトゥデイトではないにせよ、ちょっとは本にも目を通しておきましょう。ビジネスの現場の近くにいるリサーチャーたちよりも半歩遅れてしまいますが、社会学者の研究・調査等からもえるところは多いと思います。とっつきやすいところでは
橋元良明『メディアと日本人』岩波新書、2011年(I4さんが参考文献に挙げてたはず)
電通若者研究部『若者離れ』エムディエヌコーポレーション、2016年(Nさんが参考文献に挙げてたような)
あとは
遠藤薫編『ソーシャルメディアと<世論>形成』東京電機大学出版局、2016年
橋元良明編『日本人の情報行動2015』東京大学出版局、2016年
NTTドコモモバイル社会研究所編『データで読み解くスマホ・ケータイ利用トレンド』中央経済社、2016年
松田美佐ほか編『ケータイの2000年代』東京大学出版会、2014年
富田英典編『ポスト・モバイル社会』世界思想社、2016年
津田正太郎『メディアは社会を変えるのか』世界思想社、2016年
『日本人の情報行動2015』には、年齢別だけではなく、学歴別や年収別でのSNS利用実態調査のデータがあり、いやなかなかおもしろい。マーケティングよりだと
阿部真也ほか『インターネットは流通と社会をどう変えたか』中央経済社、2016年
それから、もう10年以上の前の論文になりますが
辻大介「電子メディア上のかかわり」井上俊・船津衛『自己と他者の社会学有斐閣アルマ、2005年
とか。いまだにこの領域のことを考える枠組みとして、使えそうな気がします。


A2「「女子アナウンサー」と「女子アナ」の違い」

あまり先行研究のない領域なので、まぁ、いろいろ資料集めて、自由に思ってることを書いてください。
手元に古本屋で見つけた
『アナ本:あのフジテレビの女性アナウンサーが、全員でナント!テレビでは公にできないことを、本気になって、みんなしゃべっちゃったデス』フジテレビ出版(発売:扶桑社)、1987年
という本がありますが、T1さんのレポートにあるように、「30年前、調子こいてたなぁ〜」って感じです。


A3「在日コリアンアイデンティティ変容:映画「パッチギ!」を事例にして」

小熊英二ほか『在日二世の記憶』集英社新書、2016年
という本は、新書にしてはびっくりするほどぶ厚いけど、おもしろい本でした。映画ネタでいくなら、この前言っていた「パッチギ!:LOVE&PEACE」や「キューポラのある街」、あとヤン・ヨンヒ監督のものなど観るといいのでは。個人的には、「パッチギ!」の井筒監督の「ガキ帝国」がお勧めです。先行研究としては、「四方田犬彦」「梁仁實」などで検索かけてみると、いろいろあるはず。


I2「広告とフェミニズム:「TOM FORD LIPS AND BOYS: BRING ON THE BOYS」CM分析を通じて」

広告のジェンダー分析は意外と進んでない領域で、
上野千鶴子『セクシィ・ギャルの大研究』岩波現代文庫、2009年
石川弘義・滝島英男編『広告から読む女と男』雄山閣出版、2000年
あと、Erving GoffmanのGender Advertisementsを誰かが自炊してくれたらしく、ネットでpdfで読めます。
それから「ポンサピタックサンティ・ピヤ(PONGSAPITAKSANTI Piya)」で検索すると、何か出てくるかも。あと研究者じゃなくて、制作者の方ですが「尾形真理子」で検索してもおもしろいかも。図書館で『CM年鑑』『コピー年鑑』の類を眺めてみるのも、おもしろいかも。


I3「スポーツ心理」

この領域は正直お手上げなので、がんばって自力でスポーツ心理学やコーチングの本読んでください。人間福祉学部あたりに詳しい先生がいるかも。


I4「メディアとジャニーズ:変わりゆくアイドルとファンの関係」

最近がんがん本が出ています。まず太田本で言えば
太田省一『アイドル進化論』青弓社、2011年
太田省一中居正広という生き方』青弓社、2015年
太田省一『ジャニーズの正体』双葉社、2016年
太田省一SMAPと平成ニッポン』光文社新書、2016年
他に
香月孝史『「アイドル」の読み方』青弓社、2014年
さやわか『僕たちとアイドルの時代』星海社新書、2015年
矢野利裕『ジャニーズと日本』講談社現代新書、2016年
Nさんも参考文献に挙げていた
柴那典『ヒットの崩壊』講談社現代新書、2016年
論文だと
吉光正絵「K-POPにはまる「女子」たち」馬場伸彦・池田太臣編『「女子」の時代』青弓社、2012年
塚田修一「彼女たちの憂鬱:女性アイドル“冬の時代”再考」鈴木智之・西田善行編『失われざる十年の記憶』青弓社、2012年
あと、F1君のレポートのような話だと
陳怡禎『台湾ジャニーズファン研究』青弓社、2014年
ジャニーズとかアイドルというよりは、そのファンの話が中心だけど、非常におもしろいです。それから先ほどもあげた『自己と他者の社会学』にある
長谷正人「ヴァーチャルな他者とのかかわり」井上俊・船津衛『自己と他者の社会学有斐閣アルマ、2005年
もお勧め。


U「現代ファッション:服というツール」

引き続きになりますが、河原和枝「<視線>としての他者:ファッションをめぐって」井上俊・船津衛『自己と他者の社会学有斐閣アルマ、2005年
あたりから。社会学系のファッション研究としては、「河原和枝」「米澤泉」「成実弘至」などで検索かけてみてください。


O「ペットの殺処分はなくせないのか」

あ〜、この領域、まったく知識ないです。関連する本・記事を芋づる式にたどっていき、動物愛護の活動をしている人やグループにコンタクトできればなぁ。


K1「結婚を社会学する:「結婚」という夢をもてない若者たちへ」
K2「女性の社会進出」

まとめます。
山田昌弘本はけっこう参考文献に挙がってましたが、最近
山田昌弘『モテる構造』ちくま新書、2016年
という本も出ました。他に
筒井淳也『結婚と家族のこれから』光文社新書、2016年
中野円佳『「育休世代」のジレンマ:女性活用はなぜ失敗するのか?』光文社新書、2014年
は必読。


K3「広告業界を揺さぶるPR業界の台頭」
G「広告そしてテレビの行く末」

さらにまとめます。
吉良俊彦『広告0円』宣伝会議、2016年
日本PR協会編『広報の仕掛け人たち』宣伝会議、2016年
境治『拡張するテレビ』宣伝会議、2016年
そう言えば『AD STUDIES』の最新号(Vol.58、WINTER2016)の特集テーマが、「パブリック・リレーションズ研究の新たな視点」だったなぁ。『宣伝会議』『ブレーン』『広報会議』あたりのバックナンバーを。


K4「日本と海外の流行するCMの行方について」

広告の国際比較研究も、あまり最近見かけないです。「ポンサピタックサンティ・ピヤ(PONGSAPITAKSANTI Piya)」で検索を。実務に近いところならば、「佐藤達郎」で検索を。『ブレーン』『コマーシャルフォト』あたりのバックナンバーを。


S「事故の発生とそれに伴う私たちがとるべき態度」

すまんが、こちらに何の知識もないのだ。社会心理系の先生に、ヒューマンエラー研究などに詳しい人がいそうな気もするが…


T1「落ちこぼれの「フジテレビ」」

参考文献にあった「なぜ凋落したか」本以外にも
中川一徳ほか『フジテレビ凋落の全内幕』宝島社、2016年
があります。あとドラマの話ですが
中川右京『月9』幻冬舎新書、2016年
フジテレビ社員の書いたものとして
栗原美和子『テレビの企画書』ポプラ新書、2015年
それから、フジサンケイ・グループの成り立ちという点では、
辻井喬『風の生涯』、中川一徳『メディアの支配者』、境政郎『水野成夫の時代』
などマニアックでいいです。


T2「ディズニープリンセスからみる現代求められている本当の女子力とは」

ディズニーのジェンダー分析は、参考文献でも挙がってた若桑みどり本と
荻上チキ『ディズニープリンセスと幸せの法則』星海社新書、2014年
ディズニー全般ということでは、「有馬哲夫」で検索するとか
速水健朗『都市と消費とディズニーの夢』角川oneテーマ21、2012年
新井克弥『ディズニーランドの社会学青弓社、2016年


N「音楽の過去と未来」

宇野維正『1988年の宇多田ヒカル新潮新書、2016年
永井純一『ロックフェスの社会学ミネルヴァ書房、2016年
などかなぁ。当事者の証言としておもしろかったのは
牧村憲一『「ヒットソング」の作りかた』NHK出版新書、2016年
松木直也『音楽家村井邦彦の時代』河出書房新社、2016年


F1「外から日本を見てみよう:日本のポップカルチャー編」

ソフト・パワーとか、クール・ジャパンとかいろいろ本が出てるけど、とりあえず
岡本健・遠藤英樹編『メディア・コンテンツ論』ナカニシヤ書店、2016年
あと、ポピュラーカルチャーのグローバリゼーションという話は、まずは「遠藤薫」で検索を。


F2「タカラヅカの魅力とは一体なんなのか」

参考文献で挙がっていたもの以外に、新しい動向としては
宮本直美『宝塚ファンの社会学:スターは劇場の外で作られる』青弓社、2011年
長崎励朗『「つながり」の戦後文化誌:労音、そして宝塚、万博』河出書房新社、2013年
東園子『宝塚・やおい、愛の読み替え:女性とポピュラーカルチャーの社会学新曜社、2015年


M1「アニメ妖怪ウォッチの人気と与えた影響」

子どもたちがポケモン妖怪ウォッチもスルーしたので、これまたこの領域は見当つかず…。とりあえず
中川大地『現代ゲーム全史』早川書房、2016年
はすごい本だとは思うけど…。


M2「社会学から観るメディアアートPerfumeの活躍史を中心として」

社会学系では、先行研究、あまりない領域だと思います。直接関係ないけど
ハワード・ベッカー『アート・ワールド』慶應義塾大学出版局、2016年
とか…。もう知ってるかもだけど、東京に行く機会があったら
初台のNTTインターコミュニケーション・センターをのぞいてみては。


Y「スポーツにおける指導と体罰

スポーツ社会学・教育社会学方面も、よくわからないので。とりあえず
内田良『教育という病:子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』光文社新書、2015年
あと、山本雄二『ブルマーの謎:〈女子の身体〉と戦後日本』青弓社、2016年
という本はおもしろかったです。


では、みんな就活がんばれー(あとライスボウルとかも)。


今日も研究室でもろもろ。


夫馬信一『幻の東京五輪・万博1940』原書房、2016