60歳からの自分いじり

恥の多い生涯を送って来ましたが、何か?

(講義関連)アメリカ(11)「ハーフ」のポピュラー・イマジネーション

(ポピュラー・カルチャー論講義補遺)「アメリカ」を考える(11)「ハーフ」のポピュラー・イマジネーション

 

 「ハーフ」という言葉は70年代頃から広まり始め、「ゴールデン・ハーフ」という1970年代前半に活動したメンバー全員がハーフという設定の女性アイドルグループがきっかけで、この言葉がよく使われるようになったと言われています(下地ローレンス吉孝『「ハーフ」ってなんだろう?』平凡社、2021年)。

 1961年生まれの身としては、アイ・ジョージ山本リンダ、テレビドラマ「サインはV!」のジュン・サンダース(范文雀演じる)などの存在もありつつ、「ゴールデン・ハーフ」(ないし「ゴールデン・ハーフスペシャル」)が、「ハーフ」の祖型という説は、説得的に感じます。

 そして、ハーフのイメージに関しては、「欧米系・白人系のバックグラウンドと美しい外見、英語能力や外国生活経験などの文化資本中流以上の階級イメージ(必ずしも実際に中流以上の階級とは限らないが、そのようなイメージを持つもの)がパッケージ化され、それが支配的なハーフのイメージ、つまり〈ヘゲモニックなハーフ性〉として広く流通している」(高美哿「戦後日本映画における〈混血児〉〈ハーフ〉表象の系譜」岩渕功一編『〈ハーフ〉とは誰か』青弓社、2014年、80p、太字は原文傍点)。

 この『〈ハーフ〉とは誰か』には、2011~12年に大学生に対して行われた調査結果ものっており、「ハーフ」という言葉から連想する人物としては、ベッキー、ローラ、トリンドル玲奈ウエンツ瑛士ダルビッシュ有、JOYらの名が多くあがったとか。まずは、コーカソイドとジャパニーズとの間に生まれた人が「ハーフ」、ということでしょうか。こうした調査を今行っても、大勢は変わらないような気がします(大坂なおみ、八村塁、鈴木彩艶、アントニー副島淳、関口メンディなどの名も挙がるかもですが。アジャコング、最近の大学生、ピンとこないか)。

 そして、さらに言うと、『「ハーフ」ってなんだろう?』には次のような事例があがっているように、「白人系ハーフ=アメリカ」のイメージもあると思います。

 

81p「母がスイス人で、父が日本人なんですけど、イギリスで父の仕事があって、母はそこで働いてたので、そこで私が生まれて、日本に転勤になって、日本に家族全員で移って、という感じです。…小学校ではまわりから、「ヘンな顔」って言われたり、「日本語ヘンだ」って言われたり、そういうこともありましたね。これは、あるあるだと思うんですけど、ほかのクラスからわざわざ私を見に来たりだとか。あと、いっつも「アメリカ人!」「アメリカ人!」って言われてました。海外イコール、アメリカみたいなイメージが」

 

 また、『「ハーフ」ってなんだろう?』では、アイドルグループ「ゴールデン・ハーフ」が、セクシャルなものとして商品化されていた、という話がありました。そういえば、山本リンダも、清純派路線から「お色気」にふって再ブレイクを果たす、みたいな過程を子供ながらに眺めていた記憶があります。あとは安西マリアの「ハーフ匂わせ」の売り出し方も記憶してます(青山ミチは、ギリ物心まにあわず)。「ハーフ匂わせ(実際はそうではない)」の売り方と言えば、沖縄出身の南沙織もそうだったのかも。シンシアというそのクリスチャンネームが広まり、よしだたくろうかまやつひろしに「シンシア」(1974年)というオマージュの曲もあります(沖縄(出身)などのアメリカ×アジアのハーフに対して「アメラジアン」という呼称も存在しますが、詳細はS・マーフィ重松『アメラジアンの子供たち:知られざるマイノリティ問題』集英社新書、2002年、野入直美『沖縄のアメラジアン:移動と「ダブル」の社会学的研究』ミネルヴァ書房、2022年)。

 ハーフ設定と言えば、GS「ゴールデンカップス」に関しても「長い髪の少女」(1968年)くらいは、リアルタイムな記憶に残ってます。しかし、横浜(本牧)出身ゆえのギミックだったりとか、その音楽性について知ったのは後年でした

 あと、後年掘り起こしてみたといえば、映画「小さなスナック」(1968年)。やはりGSブームの副産物ですが、爽やかな青春スターだった頃の藤岡弘(現藤岡弘、)やジュディ・オングとともに、ケン・サンダースの姿が印象的でした。未見ですが、映画「自動車泥棒」(1964年)にも安岡力也、ジョー山中とともに出演したとか。また、この「自動車泥棒」には、「非行少女ヨーコ」(1966年)トミイ役の関本太郎も出演していたよう。
 ミュージシャン、ジョー山中山口冨士夫の凄さも、後年追体験することになります。

 話、大きく逸れてしまいましたが、「ハーフ」表象を通じても、日本においてジャパニーズ以外を指す際のデファクト・スタンダードとして、「アメリカ(のとりわけホワイト)」があること、その存在感の大きさが確認できると思います。

 

 

 今日は、大阪市内にて会議。